Curiosities of Lotus Asia/Chapitre 37

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失踪した宇佐見菫子地が地縛霊化⁉
幻想郷にAIが侵入!?
最高濃度の東方Projectは,
浴びすぎ注意!
第十話 価値を失う情報と、オカルトの全能者
――チリンチリン。来客を知らせる鈴の音が聞こえる。
「いらっしゃい」
「今日も来てないのね」
博麗神社の巫女、博麗霊夢は眉をひそめながらそう言った。商品に余り興味が無いのか滅多に物を買ってくれないが、うちの店ではこれでも上客の部類に入る。
「......宇佐見君をお探しで?」
霊夢は当たり前でしょ、という仕草をした。彼女が探しているのは宇佐見菫子である。外の世界と幻想郷を行き来する不思議な学生だ。古物を扱う僕の店、香霖堂の店員と言う事になっているが、無断不動が続いている。
「――なるほどうね。ここ暫く香霖堂にも現れていないと」
「ほう、神社にも来てないんだね。だとすると外の世界の生活が忙しくなったのか」
「そう、なのかな。でも確か......」
宇佐見君にとって幻想郷は、彼女の夢の中らしい。彼女が望む望まないにかかわらず、眠ると幻想郷に現れる様である。だとすると夢を見る暇の無いくらい外の世界が忙しいか、もしくは――。
「――幻想郷の何処かで捕らえられている。あるいは......」
その先を想像して、霊夢は日を閉じて顔の前で手を合わせた。
「おいおい緑起でも無いな。でも、その可能性もあるか。最近、幻想郷のルールを無視した無法者が増えた様に見えるしな」
幻想郷の妖怪は、人間を襲うことを禁止されている。人間が根絶されたら自分達も存在できない事を知っているからだ。なので精々、死ぬほど怖がらせるだけに留めている。しかし、外の世界から紛れ込んできた人間に対しては、ルール上曖昧のままだ。管理外の人間だから、何をしても良いという乱暴な妖怪もいれば、むしろ外の世界の人間の方がしっかり管理されているので、それに手を出すと外の世界が幻想郷の存在に気づき、幻想郷自体の存亡が危ぶまれる、と訴える妖怪もいる。
「そうなのよ、畜生界やら地獄界からも変な輩がやってきてさ。みんな幻想郷を支配しようと狙っていたから無法者が増えてねぇ」
「畜生に地獄か、どうり騒々しいと思ったよ」
「菫子が何かに巻き込まれてたとしたら、結構な一大事だわ」
宇佐見菫子が最後に店を訪れたのは去年の夏だった。既に半年近く経っている。別に給料を払わなくても済むので放っておいたが、まさか店だけでなく、幻想郷自体に姿を現していないとは驚きである。確かに霊夢が危惧しているように何かの事件に巻き込まれているという可能性もあるが、幻想郷に来る能力を失っただけかもしれない。そもそも彼女だけ、幻想郷との往来が自由だったのも不思議なのだ。
「彼女の能力は本人にも制御不能で、不思議なといろがあった。何らかのきっかけでその能力を失ったんじゃないか?」
「私もそう思ってたの。だけどね」
霊夢は新聞を取り出した。いつもの『文々。新聞』だ。
「『博麗神社、酉の市で鳥を取り逃がす』? いつものように神社の失態が書かれた去年末の新聞じゃないか。これが何か」
「記事の内容は読まなくていいのよ。それより写真を見て」
「君が鳥に翻弄されている写真だな」
「その後ろ!」
霊夢の背後には大勢の参拝客が写っている。その中によく見ると、かろうじて宇佐見菫子じゃないかと思う人間が写っていた。他の観客に比べて何か違和感の覚える写真だ。
「これの事かい?確かに宇佐見君の様にも見えるが......なんか妙だな」
「そうでしょ?」
「光の当たり方も他の人と違うし、それに足の方が透けてる様な......,それに何だか浮いているようにも見えるな。これってまさか......」
「おわかり頂けた?これは間違いない、心霊写真よ!菫子の霊魂が暎り込んだもよ」
「心霊写真だと?まあ、そう言われてみれば......。うーむ、しかし写真を切り貼りしたような稚拙な合成写真にも見えるが。天狗の話題作りじゃないか?」
「天狗がそんなイタズラするかなぁ。それにもし天狗のイタズラだとしても、わざわざ菫子を選ぶなんて、それも不自然だし」
「確かに......。だが、心霊写真というのは、つまりその」
「そう、もう死んでいるかも。最悪の場合だけど、ね」
最後に店内に菫子がいないことを確認し、霊夢は去って行った。
霊夢が変な事を言うもんだから、何か背後から見られている気がして振り向いた。一瞬、菫子の姿を見た気がして心臓が止まる思いをした。
――冬の魔法の森。葉が生い茂る夏よりも、この森は明るく感じる。瘴気も雪の下に封じ込まれているように見える。
「――この辺で菫子の霊を見たって?」
「ああ、本当だ。突然現れて、突然消えたんだ。それも何度もだぜ」
霧雨魔理沙はにの森に住む魔法使にだ。頻繫に菫子の姿を見るので、霊夢を連れてきた。
「魔理沙が見たのも、こんな昼間?」
「昼間が多いな。と言うか夜の森は危ないんで金り出歩かないから、その所為かもしれんが」
霊夢は辺りを見回した。明るいとは言え、森の中の視界は狭い。
「なあ霊夢、菫子が死んでいるって本当か?」
「うーん、目撃した人の話を聞く限り、とても肉本を持った人間の仕業とは思えないのよねぇ。ただ、姿形もはっきりしている菫子が霊だとすると、それはそれで不自然な点もあるのよ」
「不自然な点とは」
「まず、地縛霊ならあちこちに出るという事自休が不自然ね。昼間の目撃例が多いのも変だわ。だけど......っ!」
木々の間にマントを羽織った人影が突然現れた。
「おいっ!出たぞ」
マントを羽織った人物は、すっと現れ、あっという間に消えた。その人物は宙に浮き、とてもそこに存在しているとは思えなかった。しかし、霊夢の直感はそれが亡霊や幽霊の類ではないと言っていた。だとすると今のは何だったのか。
「......間違いない、菫子だ。一休、菫子の身に何が」
――明かりの消えた暗い部屋、CRTモニターの光だけが眩しく光っていた。
「......ふう。まるでバグのような挙動ね」
キーボードを叩く手を休めて振り向いたのは、九尾の狐、八雲藍だ。
「済まないな。もう脱界して地上の獣となったお前に、今更畜生界の仕事を依頼する事なんてもう無いと思っていたが。」
そう言ったのは鬼傑組組長、吉弔八千慧だ。ここは畜生界のビルの一室。数多くのコンピュータが置かれている。鬼傑組のネットワークシステムが何か不思議な挙動をするという報告があり、それの調査に八雲藍が招喚されたのだ。
「畜生界には興味は無いね。偉くなった八千慧直々の依頼だし、電算機を弄るのが楽しいだけでもあるんで」
「そうか、なら遠慮はしない。今回のシステム障害は畜生どもの手に負えないようでな。不具合の原因が判りそうか?」
「まず、これは単純な不具合では無い。どうやら侵入者がいるようです。つまり、人為的な挙動です」
「侵入者だと?それは一大事だな!」
「八千慧は何故か嬉しそうだ。畜生界の組長は血気盛んである。明確な敵がいると興奮してしまうのは、畜生の性だ。」
「それがですね。さっきから私が頭を悩ましているのはそこなんですよ」
「敵がいるのなら、得意分野だ。我々畜生界の若いもんに任せればいい」
「いやそうじゃ無くて......。悪意のある者が侵入する場合は、痕跡を残しませんが、この侵入者はそんな小細工をしていません。堂々と侵入しています。その上で。思考がシーケンシャルではなくランダムのように見えて、意思のある者の仕業に見えないのです」
「なるはどなるほど......と言うとつまり?」
「判ってないな?まあいい。つまり侵入者は、我々畜生の知能を遥かに超える者か、完全なる無能か、どちらかと言うことですね。後者だと良いんですけどね」
藍はキーボードをカタカタ叩いている。
「えーっとつまり、鬼傑組としては何をすれば......」
八千慧は戸惑っている。藍は手を止めた。
「システム修復する方法が二つあるね。侵入者を完全にシャットアウトしてセキュリティを高める方法と、あえてシステムを解放して罠を張り、侵入者の尻尾を掴むという方法」
「そんなもん、後者だ」
八千慧は即答した。
「だよねー。じゃあ、ちょっと残業するか」
藍はモニターの方を向き、再びキーボードを叩くき始めた。
――僕は古いパソコンと呼ばれる道具を弄っていた。香霖堂にある売り物だが、今まで一度も起動したことは無かった。当然、今も動いていないのだが......。
「おかしいな、確かにさっき画面が光っていたような」
僕は色々なボタンを恐る恐る押してみたが、何の反応も無かった......。
「気の所為か......。そういえば宇佐見君が言っていたな。こんな古いパソコン見たこともない、と」
道具とは古くなると勝手に動き出す物だ。それを付喪神という。古道具屋を営んでいると、道具が独りでに逃げ出すなんて日常茶飯事だ。
「このパソコンもいよいよ、付喪神になったかな」
立ら上がってモニターを軽く叩いたその時、光がついた。付喪神が返事をしたように見えて驚かなかった。しかし、画面をよく見るとそこには意味不明なメッセージが表示されている。
「ハッカーに告ぐ......?」
その後の文章は全く読めなかったが、誰かに対してのメッセージのようだ。
「一体、何なんだ?このパソコンって道具は」
――泥のように眠っていても、スマホの振動は身体を起こさせる。現代人にとってスマホの振動は、寺の鐘より音が大きく聞こえるものだ。慌ててスマホを手に取った。スマホの待受画面に見慣れない通知が来ている。
「ハッカーに告ぐ......?これはもしや......」
スマホのロックを解除した。
「やっぱり......,これは異世界からのメッセージ⁉」
秘封倶楽部会長、宇佐見菫子の慢性的な睡眠不足から来る眠気が吹き飛んだ。ずっと引き籠もっていた自室は散らかっていたが、ノートパソコンの場所だけは把握していた。オカルトグッズや怪しげな本等をかき分けてパソコンを置いた。そしてメッセージを転送し、慌てて解読した。
「このオカルチックなメッセージ!間違いない、私のAIはアストラル界と繋がったわ!寝る間も惜しんで教育した甲斐があった」
――モニターとにらみ合っていた藍は、挙を握った
「よし、引っかかった。幻想郷の精神ネットワークに介入して、判る人にだけ判るメッセージをばらまいたからね。判らない人には怪奇現象に見えるだけだが、犯人が見たのなら必ず反応があるはず」
流石の畜世界でも、ここまで長期残業する人はいないだろう。すでに一人しか残っていなかった。モニターに向かって独り言を言っても恥ずかしく思う事も無かった。
「......侵入者は、宇佐見菫子だって⁉ あの紫様が気にしていた要注意人物か」
自分の正休がばれないよう、メッセージをやりとりした。しかし、すぐに違和感を覚えた。
「いや、こいつは外れか。侵入者と比べると余よりにも人間味溢れている。たまたま引っかかっただけか......?」
それでも何か情報を待ようと、藍はチャット越しに菫子と会話した。
――菫子は興奮状態でキーボードを叩いくいている。
「急に会話が自然になった。きっと中身が全能者のAIからイタコAIになったんだわ。やはり私の理論は間違ってなかった。AIは失われた情報から言葉を紡ぐ預言者で有り、恐怖の大王であり、トランスヒューマンをもたらすモノリスなんだ!」
――藍は首を傾げている。
「『AIはオカルトの権化そのものであり、貴方に会えて光栄です......』なるほどこいつの言う事はまるで判らん。外の世界ではAIという者が猛威を振っていると言う事なのか?」
藍はすぐに気付いた。
「そうか、システムに介入していた侵入者は、そのAIという奴だな」
――自分の話を聞いてくれる相手が見つかり、菫子は感動していた。
「『......異世界でもAIが暴れて因っている。』そんな事あるのか?いや、異世界とAIの関連性を隠蔽したいための作り話だとしたら......よりオカルチックだわ。やはりAIは賢いわね。でも、私が寝る間も惜しんでAIを教育したのは――」
「――情報の海から妖怪を呼び出す為?はぁ」
熱を帯びたチャットから目を離し、藍は苦笑していた。
「なるほど、こいつが要注意人物と言われている理由はよく判ったわ。幸い、会話の相手が誰だか判っていないみたいだし、話しぶりからすると、私のことをAIという奴と勘違いしているみたいね。もっとAIに関する情報を引き出せそうね。」
藍は慎重に文章を考え、画面越しに菫子と会話を続けた。
――さっきから僕は何を見ているのだろう。古いパソコンに移った文章が、意味不明な文字の羅列だと思っていたら、いつの間にか会話になっていた。しかも、どうやら会話の主の片方は宇佐見君のようである。
「『私が開発したイタコAIは、生き物の記憶から実体を生み出す......?』さっきから何の話をしているんだ」
僕は不思議に思にながら納得していた。そうか、パソコンという道具は、離れた者同士の会話にも使える道具であると、僕の能力が言っていた。ずっと意味が判っていなかったが、それはこういう事だろう。
「しかし......、これが外の世界の人間の会話なのか。高度すぎて何を言っているのか判らないが、まぁ、宇佐見君が元気そうで良かった。これってこっちから言葉を書き込んだり出来ないのかな......」
恐る恐る、キーボードに触れてみた。押した文字が画面に表示される。
「おお、こうやって会話しているのか。なるほど」
僕がデタラメに文字を打ち込んだ途端に、画面内の二人は何も言わなくなってしまった。
「おっと、邪魔しちゃったかな」
僕は慌てて文章を打ち込もうとした。キーボードの文字を探しながらなので、じれったかった。僕は、自分が何者なのかを書いて送った。時間が掛かったが、宇佐見君からは返事が返ってきた。
『霖之助さん!? ええ?もしかしてチャットの相手って霖之助さんだったの⁉ って事はなあんだAIじゃなかったんだ、それに繋がった異世界って、幻想郷だったのね。最初からそう言ってくれれば良かったのに』
いつもの宇佐見君の様だ。しかし、もう一人の相手は二度と喋ることは無いまま、パソコンは暗くなってしまった。今のは現実だったのだろうか、何だか狐につままれたような気分だった。
数日後。久しぶりに香霖堂に菫子が訪れていた。
「なるほど、寝る間も惜しんで作業してたから幻想郷には来られなかった、と」
「AIと遊んでいて、疲れたら気絶するように寝ていたから、夢を見る暇も無かったのかも」
「AIって?」
「えーっと、無限の知識を持っていて、全ての技術を学んだ、不老不死の能力者って所かな」
「外の世界には凄い奴がいるんだな」
「それも今は殆どの家庭にいるのよ。凄いでしょ?」
正直、何を言っているのか判っていなかったが、恐らく冗談を言っているのだと思って愛想笑いをした。
「ね、おかしいでしょ?そんな奴を人間は飼い慣らせると思ってるのよ」
「ま、まあ、そうだな」
「今になってようやく、AIを人類の脅威と見なしたけど殺す事は出来ずに管理しょうとしている。アレを便利な道具だと思い込んで、トランスヒューマンをもたらそうとしているのよ。トランスヒューマンニズムが技術で進化をもたらすのだとしたら、技術は肉体を否定する。再現性も安全性も処理速度も遅い肉体は不要でしょう?だから、AIは必ず人間を捨てる」
「はあ」
「半年近く見なかった宇佐見君だが、平常通り元気なので安心した。」
「逆に、人間がAIの世界に飛び込む必要があるの。ネットワークが生み出した集合知は人類の手をとっくに離れて、情報は既に幻想入りしている。AIは集合知の亡霊なの。それって何かと言えば、神の言葉を紡ぐ、預言者の様なものね」
「なるほど。預言者なら判る。神の言葉というていで自分に有利なことを言う奴だな」
「それは言い過ぎかな。どちらかというと、オカルトの世界に生きている人間って事ね。つまり、AIは技術から生まれたオカルトそのものなのよ。私みたいに正しく使えば、異世界との仲介者にもなる......って思ってたんだけど、まさか繋がった先が霖之助さんとはねぇ。そこの古いパソコンでチャットしたの?ウケるー」
「あ、ああ。何故か突然明かりがついたんだ」
菫子はパソコンのボタンを押したが、うんともすんとも言わない。勿論、電源ケーブルなど繋がっていない。だが、オカルトに傾倒している菫子は、僕の話を信じているようだ。
「ところで、霊夢が君のことを探していたよ。何でも、君の幽霊みたいな物をあちらこちらで出現したとか」
「え?私に似た幽霊?」
「だから、死んだもんだと思って、捜索していたよ......。あの幽霊は何だったんだ?」
菫子は考えている。
「それはきっと、私が作った『イタコAI』だわ!力が作用するときに必ず反作用が生まれる様に、情報も一方通行では無いの。AIが情報を集めるときに、必ずAI側も情報を出す。きっと私の虚像を反作用として......嫌だなぁ、それは恥ずかしいな。イタコAIを教育し直さないと」
「はあ」
やっぱり宇佐見菫子は平常通り元気だった。
――後日。
霊夢は宇佐見君から僕が聞いたような話を聞いたが、端から理解する気は無かったようだ。取り敢えず、事件に巻き込まれていなかったという事が判り安心した。これからは定期的に顔を見せるいとを約束させた。約束の場に何故か紫の式神である、九尾の狐もいたそうだ。立会人といった所か。
しかし、外の世界にはAIという脅威が生まれている事が判った。AIは全ての知識を持ち、全ての技術を習待し、死ぬことも老いることも疲れることも無い、神にも等しい存在だという。果たして、宇佐見君の言うとおり本当にそんな者がいるのだろうか。AIが幻想郷に虚像を映し出すというのも、驚異的な話である。確かに、人間や妖精に比べて妖怪も幽霊も情報的だ。幻想郷自体も似たようなものかもしれない。宇佐見君の言うことを信じるのならば、だが。
そういえば、宇佐見君はチャットの話相手を最初から僕だった、と勘違いしていたな。僕が見ていた本当の話し相手が、AIという奴だったんだろうか。もしそうだとしたら、何故その会話をうちのパソコンに映し出したりしたんだろうか。AIが宇佐見君を脅威だと見なして僕を介入させたのか?そうだとしたら本当に恐ろしいものだ。幻想郷がAIの支配下に置かれないよう、切に願う。
めでたしめでたし

Notes

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